先に結論を言うと、3年使って、無料版で困ったことがまだない。
私は前職——大手企業が運営するオンライン学習サービスのB2B領域——で、HubSpot Marketing Hubを約5万コンタクト規模で運用していた。有料版の上限も費用も、それなりに知っている側だと思う。その私が独立してひとり法人を作り、自社の営業管理に選んだのはHubSpotの無料CRMで、3年たった今も無料のままだ。
「無料CRMって実際どこまで使えるの?」「いつ有料にすべき?」——この記事では、ひとり法人での3年間の実運用と、「無料で困らない人・すぐ有料にすべき人」の分岐、そして困っていないのに有料化を検討している理由を書く。
広告(アフィリエイト)開示: 本記事にはアフィリエイトリンクを含む場合があります(当サイトの開示ポリシー)。内容は、株式会社イチ(ひとり法人)での実運用と前職での運用経験、およびHubSpot公式サイトの公表情報に基づきます。料金・機能は2026年7月時点のもので、最新は必ず公式サイトでご確認ください。
うちの使い方——4つの機能と、コンタクト100件弱の世界
株式会社イチ(コンサルティングのひとり法人)が無料CRMで実際に使っているのは、次の4つだ。
| 機能 | 使い方 |
|---|---|
| コンタクト・会社管理 | クライアント・見込み客・パートナーの連絡先データベース。規模は100件弱 |
| 取引(ディール)パイプライン | 相談〜提案〜契約のシンプルなステージで案件を管理 |
| タスク・メモ | 商談後のメモと「次にやること」の記録 |
| メール連携・ログ | Gmail連携で、やり取りをコンタクトに紐づけて記録 |
運用はいたってライトだ。打ち合わせが終わったらメモと次アクションをタスクにして、メールのやり取りはGmail連携で自動的にコンタクトに残る。凝ったスコアリングもワークフローも組んでいない。それでも「この人と最後に何を話したか」「今動いている案件はどこまで進んだか」が消えない——ひとり法人のCRMに必要なのは、突き詰めるとこれだけだった。
パイプラインも1本きりで、ステージは相談〜提案〜契約程度のシンプルな構成にしている。前職では何段階ものリードステータスとMQLの定義に頭を悩ませていたが、ひとり法人にその複雑さは要らない。
なぜ無料で困らないのか——3つの構造的な理由
「5万コンタクトを回していた人間が、100件弱で満足できるのか」と思われるかもしれない。できる。理由は精神論ではなく構造だ。
理由1: 営業が紹介・リピート中心で、大量のリード獲得をしていない。 コンサルティングという商売の性質上、新規は紹介経由が多く、既存クライアントのリピート・継続が売上の柱になる。広告でリードを数百件集めてナーチャリングする、という前職型の営業をしていない以上、コンタクトは自然と「本当に関係のある100件弱」に収まる。無料版の上限を意識する場面がそもそも来ない。
理由2: ひとりなので、共有・権限・承認の機能が要らない。 CRMの有料機能のかなりの部分は「チームで使う」ための機能だ。担当者の割り振り、権限管理、チームレポート——ひとり法人には全部不要。この構造は会計を税理士に任せる話とも共通で、ひとり法人のツール選びは「チーム機能にお金を払わない」だけでかなり安くなる。
理由3: 「攻めの配信」をまだやっていない。 メール一斉配信、ステップメール、フォローの自動化——無料版の制約が本当に効いてくるのはこの領域だが、今のうちの営業モデルではまだ出番がない。つまり「無料で困らない」は「HubSpotがすごい」だけの話ではなく、自分の営業モデルがどのフェーズにあるかの話でもある。
「無料で十分な人」と「すぐ有料にすべき人」の分岐
3年使った実感と前職での有料版運用の経験を重ねると、分岐は次のように整理できる。
| あなたの状況 | 推奨 |
|---|---|
| 紹介・リピート中心/コンタクト数百件以下/記録と案件管理が目的 | 無料で十分。今日から使える |
| Webからのリード獲得を仕組み化したい/一斉メール・ステップメールを打ちたい | Starter以上を検討。無料の配信上限とブランディング表示が壁になる |
| 2人以上で営業する/担当割り振り・権限管理が要る | Starter以上を検討。チーム機能が本領 |
| MAらしいMA(スコアリング・分岐シナリオ・A/Bテスト)がやりたい | Professional領域。ただしひとり法人でここまで要るケースは稀(1bの記事で書いたとおり) |
重要なのは、無料→Starterはいつでも上げられることだ。データはそのまま、プラン変更だけで済む。「最初から有料にしておくべきだった」と後悔する構造になっていないので、迷ったら無料から始めるで正解だと思う。
困っていないのに、有料化を検討している理由
矛盾するようだが、私はいまStarterへの有料化を検討している。補助金の記事で書いたとおり、デジタル化・AI導入補助金の検討対象のひとつが「CRMの有料化」だ。
理由は「困っているから」ではない。次の打ち手を仕込むためだ。ニュースレター配信やフォローの自動化といった「攻めの配信」を始める準備であって、現状の記録・案件管理に不満があるわけではない。このサイト(hitorize)を含めて情報発信を事業の導線に組み込んでいくなら、どこかでメール配信と自動フォローの仕組みが要る。そのときに慌てて移行するのではなく、補助金というコスト圧縮の選択肢がある今のうちに設計しておく——という順番の話だ。
Starterの現在地だけ書いておくと、月2,400円程度〜/シート(2026年7月時点・税抜の目安。ドル建てでは$20/シート/月)。何が解放されるか(ブランディング除去・配信枠・簡易自動化など)の詳細はHubSpotレビューの記事に整理してある。
よくある質問
Q. エクセルや スプレッドシートの顧客リストと何が違う? 「リスト」と「履歴」の違いだ。スプレッドシートは今の状態しか持てないが、CRMは「いつ何を話し、何を送り、次に何をするか」の時系列が人に紐づいて残る。ひとりでやっていると記憶に頼りがちだが、半年前の商談メモに救われることは実際にある。
Q. 無料版はいつまで無料?あとから課金されない? 無料CRMは期間限定トライアルではなく、恒久的な無料プランだ(2026年7月時点)。クレジットカード登録も不要で始められる。上位機能を使いたくなったときだけ課金する設計になっている。
Q. ひとりでCRMは大げさでは? 「導入」と構えると大げさだが、実態は「連絡先帳+商談メモ帳+ToDo」が1か所にまとまる道具だ。設定らしい設定をしなくても使い始められる。むしろひとりだからこそ、記憶の外部化の価値が大きい。
Q. 他の無料CRMや安いCRMとは比べた? ひとり法人・小規模向けの選択肢比較は1bの記事にまとめた。私がHubSpotを選んだ最大の理由は、前職での運用経験があり学習コストがゼロだったことと、無料版の範囲が広いことだ。
まとめ:無料で始めて、モデルが変わったら上げる
- ひとり法人・紹介中心の営業なら、HubSpot無料CRMは3年使っても困らない——コンタクト管理・パイプライン・タスク・メール連携で日常の営業管理は完結する
- 「無料で困らない」かどうかは、ツールの性能よりも自分の営業モデル(リード獲得型か、紹介・リピート型か)で決まる
- 有料化のタイミングは「困ったとき」ではなく「攻めの配信を始めるとき」。無料→Starterはいつでも上げられるので、迷ったら無料から
- 有料化するなら、補助金という選択肢も含めてコストを設計する
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